1型糖尿病患者を対象とした食事画像認識機能搭載型カーボカウントアプリの開発

ご挨拶

1型糖尿病患者さんの負担を少しでも減らしたい

1型糖尿病患者の皆さま、ご家族や支援者の皆さま、医療従事者の皆さま、「1型糖尿病患者を対象とした食事画像認識機能搭載型カーボカウントアプリの開発(CARB-LIFE)」のホームページをご覧いただき、ありがとうございます。富山大学附属病院臨床研究管理センターおよび第一内科の中條大輔と申します。研究者を代表してご挨拶申し上げます。

皆さま糖尿病と言えば過食や運動不足、肥満などが関係しているというイメージをお持ちの方も多いと思います。そのような生活習慣病に位置づけられる糖尿病は2型糖尿病と呼ばれ、1型糖尿病はそれとは一線を画す疾病です。1型糖尿病では生活習慣に関係なく、ご自身の膵臓からのインスリンが十分に出なくなることで血糖値が上昇し、発症します。また、このインスリンの分泌が極度に低下すると、インスリンを頻回に自己注射しても血糖値の変動を抑えるのに苦慮する場合も多く、重度の低血糖や高血糖に対する不安が大きくなります。血糖変動を抑える手段のひとつとして「カーボカウント」(「研究概要」を参照)という治療を行いますが、毎食事ごとの計算による負担も大きく、患者さんによってはその治療が十分に機能せず、食事の自由度が奪われてしまうケースもあります。

このCARB-LIFE研究では、カーボカウントを行うにあたっての患者さんやご家族の負担を少しでも軽減し、血糖変動の抑制や食事の自由度の確保につなげる目的でスマホアプリの開発を行います。「CARB-LIFE」とは本研究開発の英語名に含まれるアルファベットからとった略称ですが、摂りたい食事、炭水化物(CARBohydrate)と付き合う人生(LIFE)という意味も込めました。この研究を通して、1型糖尿病患者さんの負担を少しでも減らして、生活の質(QOL)を改善させたいと思っています。このアプリの開発や研究の成功には患者さん、ご家族や支援者、医療従事者の皆さまのご協力が不可欠です。興味のある方は、ぜひともお問い合わせいただければ有難いです。1型糖尿病の治療の発展を通じて患者さんの笑顔が増えるように尽力して参りますので、皆さまどうぞよろしくお願いいたします。

研究代表者

富山大学附属病院
臨床研究管理センター 教授 /
第一内科 診療教授

中條 大輔

研究概要

1型糖尿病患者を対象とした食事画像認識機能搭載型カーボカウントアプリの開発

Development of a CARBohydrate-counting smartphone appLIcation with Food ImagE recognition system in patients with type 1 diabetes ( CARB-LIFE )

1型糖尿病患者さんの血糖変動を抑える手段のひとつとして、摂取する炭水化物量や食前の血糖値に応じて注射するインスリン量を計算する「カーボカウント」という方法があります。カーボカウントの設定は、インスリンの一日投与量や患者さん個々のインスリンの効き目などをもとに主に医師が行いますが、この治療には専門性が求められる点、専門医でも予測不能な血糖変動を示すことがある点などの課題があります。また、患者さんは摂取する様々な食事の炭水化物量を把握した上で計算する必要があり、その負担に加えて、カーボカウントを行うがために食事の種類を制限している患者さんもいます。

そこで私どもは第一段階として、食事画像認識AIである「カロミル」と連携したカーボカウントアプリを開発しました。食事の写真を撮ることで炭水化物量が解析され、それをもとに個々に設定したカーボカウント指標をもとにインスリン投与量が計算される仕組みです。まずは、このアプリを用いて臨床試験(下記参照)を行い、患者さんの血糖コントロールに与える影響(有効性)や安全性を検証します。

その後の第二段階としては、臨床試験で集積したデータ等を用いて人工知能(AI)の開発を行い、最終的にはインスリン投与量の決定にもAIが活躍するアプリの開発を目指しています。

この課題解決には、大学等の医療機関と企業とタッグを組んで(産学連携)で挑み、今後はそこに国の協力が得られることを目指して(産官学連携)進めて参ります。

臨床試験のご案内

1型糖尿病患者を対象とした食事画像認識機能搭載型カーボカウントアプリケーションの有効性と安全性に関する非盲検無作為化多機関共同臨床試験

食事画像認識AIを搭載したカーボカウントアプリの有効性と安全性を検証するための臨床試験を実施します。有効性としては血糖変動の改善効果などを、安全性としては重篤な低血糖や高血糖の有無などを評価します。試験の実施施設は、富山大学附属病院(富山県)、国立国際医療研究センター(東京都)、国立成育医療研究センター(東京都)、福井大学医学部附属病院(福井県)、石川県立中央病院(石川県)の5施設で、この試験に患者さんに参加登録いただく期間は、2022年3月〜2024年12月を予定しています。アプリの効果を検証するために、アプリを使用する方としない方で比較する試験となります(詳細は下記の図を参照)。アプリの使用やこの臨床試験に興味がある方は、ぜひともお問い合わせください。皆さまのご協力をよろしくお願いいたします。

臨床試験の概要

※1 CGM:持続血糖モニター検査
※2 QOL調査:生活の質に関するアンケート調査

アプリを使用したデータご入力のイメージ(1日の流れ)

安心して食事を楽しめる世界を目指して

本研究で使用するアプリは、毎日の記録が手軽にできるだけでなく、画像解析AIと連携し食事・料理の写真から炭水化物量を算出することが可能です。

食前血糖値を確認し、食事の写真をスマートフォンで撮影すると、アプリが炭水化物量を算出し、個々のカーボカウント計算式に基づいてインスリン投与量の参考値を表示してくれます。

臨床試験に参加していただく患者さんは、食事の際に本アプリで炭水化物量を算出し、実際に投与したインスリンの種類や量をスマートフォンに記録していきます。

その他、日々の運動の記録や気分、体重や検査値なども記録できます。より細やかなデータを入力いただければ、将来のカーボカウントの精度を高めるためのAI開発を通して、低血糖や高血糖に悩むことが少ない未来の実現に向けて活用させていただくことができます。

食事の際のアプリ使用イメージ

1型糖尿病とは

1型糖尿病は、小児期〜高齢期まで幅広い年齢で発症する糖尿病で、生活習慣病に位置付けられる2型糖尿病とは原因も治療の考え方も全く異なる疾患です。インスリンを産生する膵島細胞が破壊され、インスリン分泌が低下するため、現在の医学水準では生涯にわたるインスリンの自己注射(1日4〜5回の注射やインスリンポンプ療法とよばれる持続注入療法)が必要であり、その中断は生命の危機を招く場合があります。糖尿病全体の5%未満という希少な難病で、重症化とともに生活の質(QOL)が損なわれることがあり、患者さんやご家族の身体的、精神的負担につながります。自身のインスリン分泌を復活させる膵島移植などの画期的な移植医療も開発されていますが、現状ではごく一部の患者さんが対象となっています。多くの患者さんのQOLを改善させるための治療法が強く望まれています。

研究メンバー

富山大学附属病院
臨床研究管理センター 教授/第一内科 診療教授

中條 大輔

国立国際医療研究センター病院
糖尿病内分泌代謝科 診療科長

梶尾 裕

国立成育医療研究センター
内分泌・代謝科 診療部長

堀川 玲子

福井大学医学部附属病院
内分泌・代謝内科 診療教授

此下 忠志

石川県立中央病院
糖尿病・内分泌内科 診療部長

浅野 昭道

富山大学附属病院
第一内科 教授

戸邉 一之

国立国際医療研究センター病院
糖尿病内分泌代謝科

小谷 紀子

富山大学附属病院
第一内科

圓角 麻子

富山大学附属病院
第一内科

稲川 慎哉

富山大学附属病院
小児科

寺下 新太郎

シンボルに込められた想い

本研究のシンボルを制作しました。

このシンボルには、テクノロジーとその先にある人間との確かなつながりが生み出す力を信じ、このアプリを利用することで、自らの日々の記録が未来の自由な生活につながる「架け橋」となることを目指すという想いが込められています。

研究実施施設・お問い合わせ

富山大学附属病院
第一内科

担当 中條 大輔
住所 富山県富山市杉谷2630番地
電話番号 076-434-2281(代表)
メールアドレス
URL http://www.hosp.u-toyama.ac.jp/guide/medical/inter1_1.html

国立国際医療研究センター病院
糖尿病内分泌代謝科

住所 東京都新宿区戸山1-21-1
電話番号 03-3202-7181(代表)
URL https://www.hosp.ncgm.go.jp/s007/010/index.html

国立成育医療研究センター
内分泌・代謝科

住所 東京都世田谷区大蔵2丁目10-1
電話番号 03-3416-0181(代表)
URL https://www.ncchd.go.jp/hospital/about/section/seitai-bogyo/taisya.html

福井大学医学部附属病院
内分泌・代謝内科

住所 福井県吉田郡永平寺町松岡下合月23-3
電話番号 0776-61-3111(代表)
URL https://www.hosp.u-fukui.ac.jp/department/metabolism/

石川県立中央病院
糖尿病・内分泌内科

住所 石川県金沢市鞍月東2丁目1
電話番号 076-237-8211(代表)
URL https://kenchu.ipch.jp/department/tonyo.html

※診断・治療に関することについてはお答えし兼ねますのでご了承ください。